植物由来100%のプラスチック製品を実現。
土に還るペットボトルで環境問題を解決する!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 松元順子 編集:菊池 徳行(ハイキックス)

独自の添加剤で耐熱性を向上。
量産可能な“高性能バイオプラスチック”
事業や製品・サービスの紹介

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世界中で、プラスチックごみによる海洋汚染が深刻な環境問題となっている。国内外で環境保全への関心が高まるなか、注目を集めているのが、サトウキビやトウモロコシなどを主原料とした植物由来のプラスチック。しかし、その大半は石油由来成分との混合品であるというのが実状だ。

こうしたなか、100%植物由来のプラスチックでの製品作りを実現したのが、バイオワークス株式会社である。同社は、植物由来の樹脂「ポリ乳酸」に独自開発した天然素材の添加剤を加えることで、従来できなかったブロー成型に成功。これにより、100%植物由来のプラスチック製品の量産を実現した。

ポリ乳酸は、生分解性で温度や湿度、pH(酸・アルカリ度)などの条件が揃うと加水分解が始まり、その後、菌によって自然分解される。よって、家庭用の生ごみ処理機でも、数日で水と二酸化炭素に分解される環境にやさしいプラスチックである。このポリ乳酸の特性に20年以上前から多くの企業が着目し、製品開発に挑んできたが、最終的な実用化には至らなかったという。

なぜなら、ポリ乳酸は成型が難しいうえに、他のプラスチックと比べて耐熱性や耐衝撃性が低いという課題があったからだ。また、企業にとって生産コストの高さも大きな障壁となっていた。こうしたなか、同社は諦めず研究を続けることで、これらの課題をクリアするとともに透明のまま結晶化も実現。高性能かつ100%植物由来のプラスチックを完成させたのだ。

飲食、化粧品など、幅広い市場で活用可能。
独自開発の繊維で衣料品への展開も

対象市場と優位性

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同社は、独自開発の添加剤で、ポリ乳酸の結晶化速度を速めることに成功。これにより、透明性を維持したまま耐熱性を130℃以上と、耐衝撃性を従来のポリ乳酸の約4倍まで向上させた。さらに、成型時間を大幅に短縮することで、生産効率も10~20倍アップ。金型などの既存設備を活用できるため、新たな設備投資が不要。従来の汎用プラスチック並みの成型性を維持しつつ、低コストを実現させている。

同社の改質バイオプラスチック(ポリ乳酸)は、さまざまな市場での活用が想定されている。具体的には、ペットボトルや弁当の容器をはじめ、衣服や糸、シャンプーボトル、事務機器、自動車部品など多様な製品に使用可能だ。

自然分解されるという特性を活かし、富士山や海水浴場のごみ問題解決の一助となることが期待されている。また、バイオプラスチック製の使い捨て容器は、安価な食器を洗って再利用するよりも衛生的なため、感染症の防止や水資源の節約にもつながる。今後は、全国の観光地、テーマパーク、2020年東京オリンピック会場などでの活用促進を目指していく構えだという。

さらに、同社ではポリ乳酸の改質技術を応用して、「高機能ポリ乳酸繊維」を開発中だ。化学繊維であるポリエステルと異なり、燃えにくく加工しやすいことに加え、藍染や草木染めなどの天然染料でも染まる特長がある。また、ポリ乳酸は体内で溶ける手術用の糸にも使われている樹脂。弱酸性で肌にやさしいことから幼児用の衣服にも使用できるという。さらに、釣り糸や漁網への展開も考えているとのこと。技術応用の可能性は無限に広がっている。

大手企業各社と協力関係を築き、
プラスチックごみの低減を目指す!

事業にかける思い

同社代表の今井行弘氏は、科学品専門商社の長瀬産業勤務時代に合成樹脂を担当していたときからバイオプラスチックの将来性に着目していた。しかし、当時はポリ乳酸の成型の難しさやコスト面などの問題があり、製品化は難しいとされていた。

「『環境に良い』という理由だけでは稟議はとおりません。環境保護は、社会的には正義であるが、企業利益の観点からはマイナスと捉えられてしまうのです」と今井氏。そんな組織としてのしがらみを抱えていたとき、大阪大学の宇山浩教授と出会い、その研究成果を事業化して2015年10月に設立したのが、バイオワークス株式会社だ。

2016年11月には、大阪大学ベンチャーキャピタルから1億円の出資を得た。これを機に、ラボスケールからサンプルの量産へと一気にスケールアップした。社会的意義の高い事業として、飲料、化粧品、OAメーカーなど、大手企業各社からも注目を集めており、製品化に向けてプロジェクトが進行中とのこと。また、将来的にはIPOも視野に入れているという。

「フランスでは2020年から、すべての使い捨てプラスチックについて家庭用コンポストで処理できるバイオプラスチックを50%以上使うことが法律で義務付けられます。このように世界的にバイオプラスチックの研究開発が進む一方で、日本はデスバレー(valley of death)に陥っています。国内の年間プラスチック生産量は1000万トン。そのうち、バイオプラスチックは、わずか3000~4000トンに過ぎません。今後、私たちはバイオプラスチックの普及促進をさらに進めていくことで、地球の環境保護に貢献できると思っています」

バイオワークス株式会社
代表者:今井 行弘 氏 設立:2015年10月
URL:http://bioworks.co.jp/ スタッフ数:4名
事業内容:
ポリ乳酸の改質、ポリ乳酸の改質剤・コンパウンドの販売
これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名:
大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社より1億円
ILS2017 大手企業との商談数:
16社

当記事の内容は 2017/12/7 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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