東大と共同開発した“次世代型植物工場”で、
持続可能な農業の可能性を切り拓く!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 松元 順子  編集:菊池 徳行(ハイキックス)

ビニールハウスを植物工場にすることで、
建設費・ランニングコストを大幅に削減

事業や製品・サービスの紹介

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近年、新たな農業手法として注目を集めているのが、人工的な環境で農作物を生産する「植物工場」だ。天候に左右されず安定生産ができ、害虫の侵入も防げることから、無農薬で安全な農作物が栽培できるというメリットがある。しかし一方で、建設費等の初期投資や設備の維持管理費が高額であるという課題があった。

そうしたなか、植物工場と同様の環境を低コストで作れるシステムを東京大学と共同開発したのが、プランツラボラトリー株式会社だ。同社が開発した新システム「プットファーム」は、農業用のビニールハウス内に特殊金属膜を張るというシンプルな構造となっている。そのため、従来の植物工場に比べ、建設コストが最大3分の1にまで抑えられるという。

また、一般的な植物工場には断熱材が用いられているが、内部に蓄えた熱を放出してしまう性質があることから、室温管理のための空調機器が多数必要であった。これに対し、「プットファーム」は、特殊金属膜で外の熱を反射することで室温の上昇を防ぐ。

輻射熱の反射率は97~98%で、外部からの熱侵入はほとんどない。そのため、空調機器の台数が少なくて済み、ランニングコストの低減にも貢献してくれる。さらに、湿度をコントロールするための調湿機を設置し、除菌・除塵した空気を取り込む仕組みのため、従来の植物工場では必須設備である二酸化炭素ボンベを稼働させる必要もないという。

養鶏など農作物以外の分野にも応用可能。
誰でもどこでも安定生産できるシステム

対象市場と優位性

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「プットファーム」のメリットは、コスト面だけにとどまらない。一般的なコンクリート床式の植物工場は「農地」には建設できない。現行の農地法では、「農地」の定義を「耕作できる土地」と定めているからだ。こうした現状に対し、ビニールハウス構造である「プットファーム」は、農地に建設でき移設も可能。リース資産としても活用できるという利点がある。

「プットファーム」の栽培実績は、レタス、水菜、小松菜など、葉菜類を中心に50品目以上にのぼる。年間を通じて、野菜や果物を安定的に生産できることから、震災地の復興支援策としても期待されている。同社は福島イノベーション・コースト構想の「地域復興実用化開発等促進事業」の助成金を受け、大型いちごのプラントを建設予定とのことだ。

同社が将来的に目指すのは“食糧生産のプラットフォーム”。単なる植物工場の枠を超え、多様な領域への応用展開を図っていく構えだ。具体的には、花卉栽培、キノコ類菌床栽培、養鶏、魚の陸上養殖、簡易冷蔵庫などだ。多様な空きスペースを活用できることから、小売り・外食業界のみならず、運輸、物流、建設業界など、多くの企業からの引き合いがあるという。

また、ビニールハウス型であることから気になるのが強度だ。現在、耐強風型・耐降雪型システム構築に向けて、実証実験を実施中。全国どの地域でも農作物の安定生産可能な環境の実現を目指している。同社はデータに基づく栽培ノウハウの提供も行っており、農業経験がなくても収益化が可能。さらに、農作業における身体的負担が比較的少ないことから、高齢者や障がい者の雇用創出の手段としても期待されている。「プットファーム」は、事業、地域、雇用など、あらゆる側面から農業の可能性を広げる潜在力を秘めている。

システムを普及させ、農業の課題を解決。
安全な食糧の安定供給を目指す!

事業にかける思い

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同社代表の湯川敦之氏は、大学時代に発光ダイオード(LED)の研究をしていた当時から、人工光型植物工場の可能性に着目。大学卒業後、IT企業経営の傍ら大学院に進学し、農業について学んだ。そこで、東京大学の河鰭(かわばた)実之教授に出会い、共同で研究を進めていた。そうしたなか、ビニールハウスを植物工場に作り替えるというアイデアを着想したきっかけは意外な理由だった。

当初、2人はコンテナ式の植物工場を作ろうとしていた。しかし、コンテナは建築物扱いとなるため大学の敷地内に建てることができなかった。そこで、やむを得ずビニールハウス内に特殊金属膜を張ることに。この法的制約から生まれた偶然のアイデアが功を奏し、着手からわずか半年で手応えを掴むことができたという。

こうした既存の植物工場の概念を覆すアイデアと将来性が評価され、三菱UFJキャピタル株式会社から出資を得ている。2017年9月には港区青山に野菜のショールームを兼ねた八百屋「LEAFRU」をオープン。完全無農薬の安全な野菜を購入できるという口コミが広がり、近隣エリアの固定客がついているという。2017年4月には、東京大学と共同で特許を取得。現在、大手企業各社と提携などの交渉を進めているところだという。

「日本では農業人口の減少が深刻化しています。私たちは持続可能な農業システムを提供することで、食料の安定供給に貢献したい。また、地球上には農作物を栽培できない地域が数多くあります。将来的には、そうした地域への普及を目指し、世界中に安全・安心な食物が行き届く社会の実現を目指します」

プランツラボラトリー株式会社
代表者:湯川 敦之 氏 設立:2014年11月
URL:http://www.plantslaboratory.com/ スタッフ数:7名
事業内容:
植物工場に関する研究開発・コンサルティング業務
これまでの資金調達額(出資額)と主な投資会社名:
三菱UFJキャピタル株式会社
資本金6575万円(資本準備金を含む)
ILS2017 大手企業との商談数:
7社

当記事の内容は 2017/12/28 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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